「エネルギー不足」は人類が抱える問題の一つ。
では【宇宙人】のエネルギー事情はどうなっているのでしょうか?
より高度な文明であれば、より多くのエネルギーが必要なはず。
もしかすると彼らは、私たちの知らない方法でエネルギー問題を解決し、
もっと住みやすいエリアに住んでいるのかもしれません。
ダイソン球
地球には太陽からのエネルギーが降り注いでおり、
電力や熱源、生命活動など様々な場面で利用されています。
しかし捕捉しているエネルギーは
太陽が本来発しているエネルギー(\( \textrm{L}_{\odot}\sim 4 \times 10^{26}\textrm{W}\)) の1/10億で、
さらにそれらを100%効率よく使ってるわけではありません。
もし仮に100%使えるとしたら世界の年間エネルギー消費量を1時間程でまかなえます。
ダイソン球とは、上でいうような太陽(などの)エネルギーを可能な限り捕捉しようとする
”メガストラクチャー”(大きな構造物)の事を指します。
物理学者フリーマンダイソンが思考実験として提案したもので、
四方八方に発せられるエネルギーを閉じ込める ”殻型” をイメージすることが多いですが、
この “殻” – ダイソンシェル – は、あくまでもコンセプト上のもので、
実際に実現するのは難しいと考えられており、
欠点を補うようなバリエーションがいくつか提案されています。
宇宙人のシグナルとして
高度に発達した文明であれば、ダイソン球のようなメガストラクチャーを作り、
独自のエネルギー収集エリアを構築している可能性があります。
そのようなシステムを構築する文明は、カルダシェフのタイプⅡ~Ⅲ型文明に分類されます。
カルダシェフスケール:
文明が使用できるエネルギーの量に基づいて技術的進歩のレベルを分類する方法。1964年にソビエトの天文学者ニコライカルダシェフによって提案された。人類の文明レベルは現在0.73で今後200~800年後にTypeⅠに昇格。
こうした文明がダイソン球を使用している証拠は見つかるのでしょうか?
ダイソン球の手がかり
ダイソン球で得たエネルギーは、使い終わると再び低温で放出されます。
半径が1AU(天文単位)のダイソンシェルであれば
使用後の放出温度は~300K程度。
(※1AU=地球から太陽までの距離)
基本の輻射色々: \( L=4 \pi R^{2} \cdot \sigma T^{4} \)
シェルに限らずスウォーム、バブルなど実際に建造されるサイズも効率上この位が妥当とされ、
廃棄された熱は波長が~10ミクロン程度の赤外線で観測されます。
だとするともし「不自然な赤外線オブジェクト」を検出した場合、
宇宙人が廃熱として放出したものである可能性が高いのでは?
ダイソン球から吐き出されるであろう特定のエネルギーが過剰に観測された場合、
宇宙人の痕跡になり得ると考えられます。
現在までの観測
ダイソン球の調査では赤外線衛星が重要な役割を果たします。
1983年に打ち上げられたIRASは全天の96%を10か月で走査しマップを作成、
カタログとしてまとめられた25万の赤外線源からダイソン球の候補が調べられました。
結果、選別された2240個の候補(青の点)の中から
16個(赤の点)がダイソン球の候補として挙げられました。
最終的に ”よさげな” 候補が3~4(赤い四角)個ほどあったものの、
すべて遠方の赤色巨星である可能性が高いと結論付けられました。
いままでのところダイソン球と思われる手がかりは発見されていません。
が、天文衛星の性能も向上しており、
より感度が高く、より広い範囲の詳細な観測が可能になってきています。
銀河全体に渡る調査や、新しい手法も開発され、探索の幅も広がっているので、
SETIプロジェクトも含めて、今後の赤外線調査に期待したいところです。
SETI : 地球外生命探査(Search for Extra Terrestrial Intelligence)⇒ https://www.seti.org/
ただ、ここで少し気になることがあります。
仮に発達した文明があるとして
太陽ほどの ”ちっぽけな” エネルギー源をわざわざ選ぶのでしょうか?
ブラックホールにもダイソン球
宇宙全体でみると、私たちが住む太陽系はかなり小規模なエリア。
先ほど見たように文明進化に伴いエネルギー使用量が増えます。
タイプⅢ型の文明がいたとして、
太陽ほどのダイソン球1つだけでは、生活拠点として非力すぎます。
また、恒星というカテゴリーで比べてみても太陽は非力な部類。
同じ恒星でもスペクトルO5型の恒星であれば太陽の約80万倍明るく\(10^{18}\)倍の
エネルギーを捕捉できます。
タイプⅡ型の文明であっても、
わざわざ太陽をエネルギー源に選ぶ理由がありません。
恒星のスペクトル型:恒星の分類法 ⇒ O、B、A、F、G、K、M で型を分類。
O型が最も高温、M型が最も低温、さらに0(低温)~9(高温)などの細分化がある。太陽はG2V。
ここではさらに進んだダイソン球を紹介します。
ブラックホール
「超大質量ブラックホール(SMBH)」は、
銀河の中心に存在すると考えられているブラックホール。
質量は太陽の\(10^{5} \sim 10^{10}\)倍程度で、
周りを回転する「降着円盤」からの強い放射をエネルギー源にできます。
↑のように発電所を建設し、得たエネルギーをビームで伝送、
そして廃棄されたエネルギーはSMBHに戻す、というようなシステムを構築できますが、
文明の手がかりもビーム状になってしまうので、
見つける可能性は非常に低いと考えられています。
中質量のブラックホールとして
「恒星質量ブラックホール(Steller Black Hole)」があります。
こちらは太陽の5倍~数十倍の質量で
星が最期を迎えた際、超新星爆発の末に形成されるブラックホール。
SMBHは タイプⅢ文明 限定の装置でしたが、
こちらは タイプⅡ文明 も対象なのでより具体的に考察することができます。
エネルギー源として、ホーキング輻射、Bondi降着などが考えられる中、
やはり「降着円盤」からの寄与が大きく、
太陽の\( 10^{5}\)倍ほどのエネルギーが得られます。
さらに「その他諸々を合計すれば」結局 \(5\times 10^{5}\)倍に達するそうです。
これだけあればタイプⅡ文明を維持するのに十分で、
予期した通り太陽に寄生するよりもこちらの方が良さそうです。
また、天の川周辺(地球から10kpcのところ)に、
このブラックホールダイソン球がある場合、
紫外線(10nm~) ~中赤外線(~40μm)という幅広いレンジで検出可能とのこと。
つまり赤外線以外でも宇宙人シグナルとなり得ます。
ブラックホールは 寿命も長い ため、
引越しせずに居座り続けている文明からの痕跡が飛び込んでくるかもしれません。
逆ダイソン球
宇宙には低温の電磁波があちこちに漂っていることが知られています。
これを宇宙マイクロ波背景放射(CMB)と言います。
宇宙マイクロ波背景放射(CMB):宇宙誕生のビックバンから40万年後に宇宙空間に放出された最初の光。
初期温度は T=3000Kだったが、宇宙の膨張と共に次第に温度を下げながら現在は T=2.725K で漂っている。
この宇宙に充満しているCMBを捕捉してエネルギーに変換し、
使用後にブラックホール(冷たい太陽)に廃棄するのが ”逆-ダイソン球” 。
” 球 ⇒ 空間 ” という方向が ” 空間 ⇒ 球 ” になっているので逆 (reverse) と表現されています。
今の宇宙で(CMBの温度 = 2.725K )太陽と同じ重さのブラックホールの場合、
得られるエネルギーは250Wほど。
なんとストロボカメラの消費電力をまかなえます。
ただ、ブラックホールが重いほどエネルギーも増えるので、
私たちの銀河中心にあるSMBHくらいであれば \(4 \times 10^{15}\) W となり、
世界各国で消費されるエネルギーの200倍くらいにはなります。
最近では宇宙誕生から約1500万年の時点で(CMBの温度= 273~300K)
居住可能な時代があったことが示唆されています。
もしこの時代に “逆ダイソン球” があれば、
ストロボのエネルギーしか得られなかったブラックホールでも\(2.9 \times 10^{20}\) Wと、
現在地球が太陽から受け取っているエネルギーの1000倍得られます。
ブラックホールの近くに住むことで、
背景にあるノイズのような光もかき集めて使用できるという利点があります。
エネルギー問題を解決したい宇宙人にとってはかなりの穴場物件ではないでしょうか。
もし私たちがダイソン球を建設できたら?
素晴らしいYouTubeチャンネルをご紹介します。
「Kurzgesagt クルツゲサグト」というドイツのチャンネル。
動画では具体的なダイソン球の作り方を説明しています。
動画にもあったように、いずれ人類は水星を拠点にして、
太陽を囲むダイソンスウォームを建設することになるでしょう。
ダイソン球は人類が進化し、
太陽系を出てもっと遠くへ引っ越しするために必須の装置です。
現在では「宇宙人の手がかり」ということに加え、
自分たちが実際にどうやって作るか?
という文脈で語られることが増えてきているように感じます。
いずれ我々も宇宙に広がっていくでしょう。
そう、先輩の宇宙人に習って。
今回も読んでいただきありがとうございました!
北海道を宇宙の街へ! ー ちゅど~~ん ー
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