【宇宙人探索 #2】「パンスペルミア説」ー 宇宙人は宇宙に生命の種を蒔いたのか?

宇宙人探索

パンスペルミア説とは生命起源論の一つ。

地球上の生命の起源は、宇宙の他の天体からやってきたとする説。

ギリシャ語で「pan」⇒すべて + 「sperm」⇒胞子 を意味し、

宇宙空間には、生命の種(胞子)が満ちており、
生育可能な環境に到達すると、そこで生命が萌芽するという考え方。

地球外から生命の材料が飛来し、
今日の私たちを形成しているとすると、、

その種は意図的に送られてきたという事もあるのでしょうか?

パンスペルミア説にはいくつかのバリエーションがあります。

ラジオパンスペルミア (Radiopanspermia)

「宇宙は生物の胞子で満ちており、星の光の圧力で空間を動いている」という説。

アーレニウスが1903年に発表。
胞子の一部が初期の地球に飛来し、増殖することで、現在の生命に進化したといいます。

星からの光の圧力=放射(ラジオ)で効率よく推進力を得られるのは、
非常に小さな胞子だけ。(太陽からの放射で高速移動できるのは、1.5μm 以下のサイズまで。)

なので、このメカニズムは、
そもそも、細菌サイズの非常に小さな胞子にしか適用できません。

仮にそのような細菌の胞子(芽胞 | がほう)があったとしても、
宇宙空間という、紫外線やX線が飛び交う過酷な環境に置かれると、

ほとんど死滅すると考えられるため、
この説は、お蔵入りに近い状態にあります。

ただし、近年の宇宙軌道上の実験から、

枯草菌(こそうきん)の胞子は、太陽が発する紫外線から保護しつつ、
粘土または隕石粉末(人工隕石)に埋め込んだ場合、

最大6年間 宇宙で生き残ることが確認されています。

となると、保護シールド付きの乗り物があれば、
宇宙空間から生命の種が飛来することが可能なのでは?

次に紹介するリソパンスペルミアの方が一般に支持されています。

リソパンスペルミア (Lithopanspermia)

「生命は隕石の岩によって宇宙に拡散したのではないか」という説

1871年にケルビン卿が考察。その100年後には、
実際に火星から来た隕石が地球上に存在していることがわかりました。

これらはエイコンドライトという隕石の一部で、

SNC隕石グループとして知られており
主にシャーゴッタイト、ナクライト、シャシナイトといった名称で分類されています。

現在に至るまで200個近く確認されており、

https://www2.jpl.nasa.gov/snc/

生命の痕跡があると疑われた火星隕石もいくつかありますが、
懐疑的な見方が強いです。
隕石ALH84001に生命の痕跡はあったのか? ⇒ )

生命の乗り物は隕石に限らず、
彗星であったり、小さな塵であったりと様々な説もありますが、

以下のような困難があり、
まだまだ、この説も推測の域を出ていません。

火星の表面を脱出する際の極限状態

隕石が火星の表面から脱出するためには、脱出速度 を越える必要があります。
脱出速度とは ⇒

その際の衝撃として、50Gpa (ギガパスカル)( 圧力鍋の30万倍 )の超高圧や、
場合によっては600℃近い超高温を経験すると考えられています。

隕石の火星脱出メカニズムもまだまだ研究がなされている重要なテーマの一つですが、

果たして、このような環境で
隕石の表面に付着していた微生物は生存できるのでしょうか?

命からがら、火星を脱出できたとしても、
その先には、まだまだ過酷な試練が待ち構えています。

宇宙空間という過酷な環境

宇宙空間には放射線が飛び交っています。
おまけに暗くて低温、真空。

温度や圧力も極限環境にあると言ってもいいでしょう。

光合成も封じられ、バクテリアなどの微生物は紫外線で壊れます。
真空に近い状態だとDNAなどの情報も損傷しやすいでしょう。

さんざん、火あぶりにされて痛めつけられた後で、
今度は、槍が降ってくるような冷凍室に放置されるという地獄の連続。

この危険な宇宙空間に、長期間ほっぽり出されても、

  • 死なない生物は居るのでしょうか?
  • 弱い生物でも生き残るような策はあるのでしょうか?

現在、様々な曝露実験が行われています。いろいろな曝露実験の紹介 ⇒

なかでも興味深いのが 「極限環境微生物」

つまり上でいう、死なないようなむっちゃ強い微生物。

なんと、↑↑ クマムシ最強説がありますww
クマムシ最強説 & 色んな極限環境微生物 ⇒

「どうやったら宇宙で死なないでいられるか」
強い奴のやりかたを見て、宇宙での”生存”の生理学的要件を研究します。

他にも、さまざまな微生物実験がおこなわれていますが、

これらは細胞のメカニズムに関する新たな知見を広げ、
地球上の医療や福祉にも良いフィードバックがあると期待されています。

もちろん、パンスペルミア説を確かめるためにも重要です。

こちらは、ギネスブック登録済みの世界で最もタフな細菌
「デイノコッカスラジオデュランス」

少しの放射線ではびくともしません。
束になっていればシールドいらない説 まである、新・最強の微生物。

この手の微生物が飛来した可能性は大いにあります。

地球に着くまでが遠足

さて、微生物たちの宇宙旅行、最後の難関は地球の「大気圏」。

こちらも高温となる激しいイベントですが、
どうやら大気圏突入に関してはクリアできそうな示唆が出てきています。

大気圏突入での生物生存の研究 ⇒

それでもまだ難しい

地球外からの生命の流入について、
徐々にですが、それぞれの段階で、実験的なテストが可能になってきています。

ただし、数々の困難を生き延びて地球にたどり着いたとしても、

新しい環境で生き残って繁栄する可能性はまだ低いと考えられているようです。

あるアプリが別のOSでは起動できないように、
地球というエコシステムに外来種がうまく適合するのかわかりません。

もちろん否定する証拠もなく、リソパンスペルミア説は、
独特の存在感をさらに増してきているように思います。

意図的パンスペルミア ( Directed Panspermia )

「地球上の生命はもともと地球外文明によって蒔かれたものではないか?」

1973年 フランシス・クリックとレスリー・オーゲルが論じたこの説は
意図的パンスペルミアと呼ばれています。

宇宙人と最も関わりあるのがこの説でしょうか。
「生命が生き延びるのに有利な天体を狙って意図的に胞子が送られている」

クリックは、言わずと知れた、
DNAの二重らせん構造を発見したノーベル賞受賞者。

「大胆な推測」と断りつつも、生命の起源を考える場合に、
むしろ真剣に考慮されるべき、もっともらしい説だと述べています。

その中で、
地球上にはこの説を(弱めに)支持するような事実が2つあると指摘しました。
Crick and Orgel(1973)

モリブデンが生物中に異常に多い(=生物に偏って存在)

モリブデンは「地殻に含まれる元素量ランキング54位」、
割合にして約1.5ppm(=0.00015%) 程のレアな元素。

にもかかわらず「ヒトを含む全ての生物に必須な元素」であり、
生体内には普通に存在し、多くの酵素(こうそ)反応に重要な役割を果たします。

生物の体は、進化した環境の化学組成をある程度反映しているはず、

と考えると、レアな元素が生体内に数多く存在することは、
生命が地球外から来たものであることを示唆しているのでは?

しかし、これだけで宇宙人の仕業とするには大げさかもしれません。

モリブデンは、海にはそこそこ普通に存在していますし、
地球環境の変化や進化の過程で、使うべくして使うようになったはずで、
別に宇宙人を持ち出すこともない。
というような、まっとうな方向からの理解が進んでいます。
( 原生代の海洋研究、スノーボールアース、ニトロゲナーゼ ⇒ )

まずはやはり身の回りの理解が優先で、
なんでもかんでも ”宇宙から” というのは少し厳しそうに見えます。

クリック本人も、これを確かめるには
モリブデン豊富な「モリブデン星(仮)」の元素と地球上の生物に
密接な関係があることを見つけなければいけないと言っています。。。

ところがどっこい、

地球上で遺伝暗号が1種類だけなのはなぜか

生物を形作っているタンパク質。

タンパク質は、やみくもに作られるのではなく、
DNAなどに記された遺伝情報という ”仕様書” に沿って設計されます。

「GCA」と並んだらアラニン、「AGA」と並んだらアルギニンを持ってくる

と言ったように、仕様書は暗号のようになっており、
その読み取り方のルールは「遺伝暗号」として広く知られています。

このルールを表にした「遺伝暗号表」は、
64項目からなる単純な表で表現できてしまいます。

意外な事に、地球上のすべての生物が、
この遺伝暗号と同じ(か非常に類似した)読み取りルールを採用しています。

そのため
ヒトのDNA情報を大腸菌に読み取らせてもヒトと同じタンパク質を作ります。
遺伝子組換え技術のベースとなる事実 )

これはどういう事でしょうか?
なぜ、みんな好んで同じ1つの遺伝暗号を使う必要があるのでしょうか?

「GCA」の並びを見てアラニンではなくグリシン、と解釈するような、
多少異なる暗号を使う生物が共存していてもよさそうです。
現在はそういうケースも。人工的に暗号を作成・改変する研究も ⇒ )

予想もつかない「オリジナル暗号使い」がたくさんいても良さそうです。

しかしそうではない、ということは、
地球上の生物は、共通の祖先から派生した可能性が高いとも言えます。
最終共通祖先「LUCA」? 共通祖先を探る ⇒ )

「あるとき地球上に、別のところから1種類の生物が送られてきた。
だから地球上の生物はすべてその派生になってしまった。」

というのが意図的パンスペルミアの立場でしょう。
はたして送り主の情報は見つかるのでしょうか?

ホモキラリティに痕跡あり?

遺伝暗号の他にも「ホモキラリティ」という特性があります。

私たちの 右手と左手 は似たような形をしていますが、
ピッタリ重なり合うことはありません。

同じ様に、タンパク質を構成するアミノ酸にも、
「右手」「左手」の違いがあり、性質も異なることが知られています。

このうち、自然界で使われているアミノ酸は(ほぼ)
「左手型(L体)」だけ。

右手型(D体)のアミノ酸は、
自然界には(ほぼ)存在せず、使用もされていません。

素材を全部逆にした生命、たとえば
鏡像バージョンの「自分」や「猫」が存在してもおかしくないはず、、

なのに、片方だけが採用されているという謎。

はじめから地球上に左手型のアミノ酸だけが豊富に存在していたとは考えにくい。。

その原因を宇宙に求める場合、
光反応によって片方が壊されたという見方が有力です。

光は伝搬する際に、進み方の ”クセ” があるのですが、
「円偏光」といってグルグル回るように伝わる光もあります。

星が誕生する現場で、円偏光をもつ紫外線が発生した場合、
その作用で片方のアミノ酸が破壊され、もう片方が優位に。

そして生成された少しの過剰が(何らかのメカニズムで)増幅され、
最終的に ほとんどを占めるようになったと推測されています。

これを支持するように、オーストラリアで採取されたマーチソン隕石からは
左手型のアミノ酸が優位に存在している との報告もありました。

果たして、、、

生命の素材のいくつかはすでに宇宙で出来ており、
それが地球に組み込まれて、育っていくとする描像は正しいのでしょうか?
( 疑似パンスペルミア説 (pseudo panspermia)

それとも地球起源説に落ち着くのでしょうか。

さらに「右」or「左」は生命にとって意味があって選ばれたのでしょうか?
単なるコイントスの裏表なのでしょうか?

などなど…

生命の起源にもつながるこの謎は、まだまだ未解決のことが多く、
学問の分野をまたいで活発に研究されています。
( ホモキラリティの起源、メカニズム:宇宙以外の色々な研究紹介 ⇒ )

万が一、遠くの宇宙で、違ったホモキラリティの生物が発見されたなら、
もしかすると宇宙人の出番かもしれません。

俺らが宇宙人だったんじゃね?

最後に映画をご紹介。

1930年のオラフ・ステイプルドンのSF小説を映像化した
「最後にして最初の人類」(Last and First Men) ( 配給:シンカ 公開:2021年7月23日(金) ⇒ )

原作は意図的)パンスペルミアの先駆けとも言われています。

もしかすると宇宙のどこかで、
破滅の危機に直面している文明や、植民地化を進めている文明によって、
すでにパンスペルミアという戦略が追求されているのかもしれません。

今では、地球からのパンスペルミアも提案されています。

もし本当に、私たちの ルーツ が、
宇宙人によって送り込まれた生物だとするならば、

今度は「私たちがその “ルーツ” になれるのか」と考えてみたくなります。

生命が育ちそうな場所はどこか?
微生物を載せる無人宇宙船をどう設計するか?
どういう微生物を送り込むのか?

たとえば、技術的な面をもう少し掘り下げるなら、

大気をシールドする微生物用パケットの製造、
海に溶け込ませるための手法、などなど、

パンスペルミア説の検討だけでなく、
工学的観点からも多くの有用なフィードバックを期待できそうです。

同じく、生物学的な面からも、

放射線はどのくらい深刻なのか、何種類の生物を送るべきか、
窒素固定や光合成が可能であればよいのか、地球外起源の痕跡はあるのか、

などなど。
他の星で生命を発生させることに成功したならば、
生命の起源についての理解も進むはず。

医療、農業などに役立つ知見も得られるかもしれません。

試行錯誤の過程そのものが、
宇宙人のプロファイリングに役立つ、という場合もありそうです。

そして、究極の目的に、

「遺伝子のノアの箱舟」があります。

人類最後の日

誰もが、人類 存続 の限界を認識しています。

それは太陽が燃え尽きる50億年後かもしれませんし、
天変地異でもっと早まるかもしれません。

環境変化や、核・戦争といった自滅により、数十年~数百年後かもしれません。

ただ、現在、私たちは、今ある生命を多くの世界に分散させる方法、
すなわち、パンスペルミアの知識を手に入れつつあります。

もしかしたら生命はもっと長い間、ひょっとすると永遠まで、
存続できる余地があるように思えます。

ベンチャー企業は火星移住などの構想も始めています。

テラフォーミング(人間に都合よく惑星を改変)という違いはありますが、
やはりその根本にも「生命の分散」的な思想があるように思います。

当然、反対意見として倫理的な問題もきちんと提案されており、

先住生命がいた場合の、感染や衝突、エコシステム破壊に関するリスクだったり、

科学的研究のため、
宇宙を手つかずのままにしておくべき、という惑星検疫を主張する意見もあります。
プチ企画 : 国連の宇宙条約を見てみる ⇒

もっと極端に、私たちの生命には価値がないので拡散する必要もない。
ということも真剣に議論されています。

そもそも、何をもって「生命」とするか、の定義も得られていません。
生命の定義を考えてみる ⇒

ん~、、あれ?? こんなことばっかり考えてますが、

私たちが今やろうとしていることって、
想像している “宇宙人” がやりそうなことTOP10に入るのでは?

もしかすると彼らも同じように悩んでいたのでしょうか。

「宇宙開闢から60億年、今日は文明最後の日。
      遺伝子に情報を載せて宇宙に散布した。また会う日まで。」

第七世代の人類代表

そう考えると、なんだかこのやり方、
私たちも大いにやりそうで、急に親近感がわいてきます。

宇宙人はどこにいるのか?

もしかすると、今このYouTubeを見ている私たちこそが
過去の文明の末裔であり、正統な宇宙人なのかもしれません。
( エンタメなので無理やりオチ付けてすいません )

私たちも、今、急いで文明を終わらせてしまうと、
宇宙人の居場所や、生命の起源といった楽しいパズルを解くことが出来なくなります。

あまり資本主義を加速させずに、
もう少しゆっくり生きてみてもいいんじゃないですかね。

今回も読んでいただきありがとうございました!
北海道を宇宙の街へ! ー ちゅど~~ん ー

北海道を舞台にバラエティ番組もやってます。
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